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第31回 地方出版文化功労賞受賞作
第31回地方出版文化功労賞は、本年6月30日の最終審査会において決定した。同賞は、昨年10月24日から10月30日、鳥取県立図書館で開かれた「ブックインとっとり2017」に出品展示された全国の地方出版物(対象約350点)の中から、各地区の推薦委員および一般の来場者による会場での投票によりその中の10点を最終候補作として挙げ、11名の審査員が持ち回りで数カ月にわたって審査したものである。
結果は以下のとおりです。 |
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●第31回 地方出版文化功労賞
■『忘れられた人類学者(ジャパノロジスト)
-エンブリー夫妻が見た<日本の村>
著者 田中一彦(たなかかずひこ)
発行所 忘羊社
福岡市中央区大手門1-7-18 電話092(406)2036
発行者 藤村興晴
体 裁 320頁 定価2,000円+税
発 行 2017年3月1日
著者略歴
田中一彦(たなかかずひこ)
1947年、福岡県瀬高町(現みやま市)生まれ。
京都大学経済学部卒。新聞記者を経て、2011年から2014年まで
熊本県あさぎり町に単身移住し取材。
共著に『知ってはならないパリ』(文芸社)
『食卓の向こう側』『君よ太陽に語れ』(西日本新聞社)。
<選考理由>
『忘れられた人類学者(ジャパノロジスト)』
昭和10年から1年間熊本県の小さな農村に滞在し、調査した若き人類学者夫妻の村での日々や調査内容について紹介した本である。
日中戦争以前の戦時色に染められていない農村の様子を、妻が日本語に堪能といった要素もあって、互いに信頼関係を築いた上で深く調査し、自らの価値観を押し付けることなくその風俗・習慣などをレポートした夫妻自身についてとその調査内容や意義をわかりやすく読ませてくれる。
今読むと驚く内容も多いが、それが旧来の姿であり、今、日本の伝統と思っていることは必ずしもそうではないことを気づかせてくれる。また、須恵村の協同社会の豊かさに圧倒される。そういう点でも優れた本であり、忘れられつつあった稀有な調査活動や内容にスポットを当てたことが高く評価された。多くの人に読んでもらいたい本である。 |
●第31回地方出版文化功労賞 奨励賞
■『旅する出島』
著者 山口美由紀(やまぐちみゆき)
発行所 株式会社長崎文献社
長崎市大黒町3-1 長﨑交通産業ビル5階 電話095-823-5247
発行者 ,柴田義孝
体 裁 204頁 定価2,000円+税
発 行 2016年10月20日
著者略歴
山口美由紀(やまぐちみゆき)氏
長崎市職員(文化観光部・出島復元整備室・学芸員・主査)広島大学文学部史学科卒。
1992年長崎市教育委員会文化財課勤務、2001年から出島復元室勤務。
著書 『長崎出島―甦るオランダ商館』(2008年 同成社)ほか
<選考理由>
『旅する出島』
江戸時代の鎖国の窓であった出島について多方面から書かれた本である。
ムックのような本の装丁や写真を多用したカラフルな紙面から、出島の観光的な紹介本だと思って読み進むと、よい意味で大きく裏切られる。
著者は長崎市で学芸員として発掘から復元に深くかかわっており、出島を様々な角度から広く知ってもらおうという「出島愛」にあふれている。
内容も出島の構成要素である島、街、橋、川などと、そこを中心に展開された服飾、工芸、食べ物、交流などがポイントを押さえながら、多少専門的なことも展覧会の解説や図録で鍛えた(?)わかりやすい文章と豊富な写真や図版、優れたレイアウトにも助けられ、興味を持って読み進められるよう構成されている。これを読んでから出島に行くと見方が全く変わるだろう。たくさんある出島の本の中でも出色である。
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●第31回 地方出版文化功労賞 特別賞
■『明治大正昭和平成
文學の國いわて輝ける郷土の作家たち』
著者 道又 力(みちまた つとむ)
発行所 株式会社 岩手日報社
岩手県盛岡市内丸3-7 電話019-653-4117
発行者 東根千万憶
体 裁 626頁 定価3,700円+税
発 行 2017年6月24日
著者略歴
道又 力(みちまた つとむ)氏
脚本家。昭和36年、遠野市生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。
テレビ、ラジオ、演劇、漫画の脚本を手がけるほか、『開封 高橋克彦』(講談社文庫)、
『梅沢富美男と梅沢武生劇団の秘密』(平凡社)、『天晴れ!盛岡文士劇』(荒蝦夷)
『文学のまち盛岡』(盛岡出版コミュニティ)、『芝居を愛した作家たち』(文藝春秋)
『野村胡堂・あらえびす』(文藝春秋)、『演劇のまち盛岡』(盛岡出版コミュニティ)
『あの日から』(岩手日報社)、『岩手の純文学』(東洋書院)など著書および編著多数。
所属団体は日本推理作家協会、日本脚本家連盟、日本放送作家協会。盛岡市在住
<選考理由>
『明治大正昭和平成 文學の國いわて 輝ける郷土の作家たち』
岩手県の文学通史として書かれた本である。
石川啄木や宮沢賢治をはじめ、岩手県は文学が非常に豊かだということをあらためて、かつ強烈に印象付けられる。通史ではあるが、文章は平易で、豊富なエピソードが興味をそそり、読み物としても面白い。新聞連載がベースのマイナス面をあまり感じさせず600ページを超える分量でありながらテンポよく読み進められる。文学者の具体的な人物像が脳裏に浮かぶだけでなく、全国的に著名なもの、地域で活躍したものそれぞれの文学者同士の様々なつながりも知ることができる。郷土資料として長く活用でき、記録性も高い。
こうした親しみやすく面白い文学史が、多くの県で出版されるよう願う。
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第31回 審査委員(2018年7月現在)
審査員長 |
齋藤明彦(元鳥取県立図書館長) |
審 査 員 |
岩田 直樹(鳥取県立高等学校校長) |
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金澤 瑞子(倉吉文化団体協議会) |
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上田 京子(鳥取短期大学講師) |
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松本 薫 (作家・NHK文化センター講師) |
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松田 暢子(日野町立図書館長) |
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山脇 幸人(倉吉市立図書館長) |
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網浜 聖子(鳥取県立図書館長) |
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岡本 圭司(鳥取県職員) |
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岡本 康(元高等学校校長) |
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岡本 知子(鳥取大学准教授) |
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