作品募集 / 趣旨 / 組織 / 過去の受賞作品

第30回 地方出版文化功労賞受賞作

第30回地方出版文化功労賞は、本年6月18日の最終審査会において決定した。同賞は、昨年10月20日から10月29日、米子市立図書館で開かれた「ブックインとっとり2016」に出品展示された全国の地方出版物(対象約350点)の中から、各地区の推薦委員および一般の来場者による会場での投票によりその中の10点を最終候補作として挙げ、9名の審査員が持ち回りで数カ月にわたって審査したものである。
 結果は以下のとおりです。
  
●第30回 地方出版文化功労賞

該当なし

 

●第30回地方出版文化功労賞 奨励賞

■『再考 ふなずしの歴史』

編著者  橋本道範(はしもとみちのり)
発行所 サンライズ出版株式会社
    滋賀県彦根市鳥居本町655−1  電話0749−22−0627
発行者 岩根 順子
体 裁 333頁 定価2,700円+税
発 行 2016年6月20日
著者略歴
編著者 橋本 道範(はしもと・みちのり)氏、1965年岡山県生まれ。滋賀県立琵琶湖博物館専門学芸員 京都大学博士(文学)。主要著者・論文『日本中世の環境と村落』、「日本中世の魚介類消費と15世紀の山科家」『琵琶湖博物館研究調査報告25号 日本中世魚介類消費の研究−15世紀山科家の日記から−』)

執筆者一覧
秋道 智彌(あきみち・ともや)氏、1946年京都府生まれ。山梨県立富士山世界遺産センター所長、総合地球環境学研究所名誉教授、理学博士(東京大学)。主要著書『海に生きる−海人の民族学』、『漁撈の民族誌−東南アジアからオセアニアへ』、『コモンズの地球史−グローバル化時代の共有論に向けて』

石毛 直道(いしげ・なおみち)氏、1937年千葉県生まれ。国立民族学博物館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授、農学博士(東京農業大学)。主要著書『文化麺類学ことはじめ』のちに『麺の文化史』に改題、『石毛直道自選著作集』

久保 加織(くぼ・かおり)氏、1961年三重県生まれ。滋賀大学教授、奈良女子大学博士(学術)。主要論文“The effect of free amino acids,nucleic compounds,and volatile constituents of funazushi (fermented sushi of a crucian carp (Cyprinus auralus) on its preference’ 、「食品ロス削減に対する生活者の意識構造」『日本食育学会誌』5巻2号

齊藤 慶一(さいとう・けいいち)氏、1985年富山県生まれ。野洲市歴史民俗博物館学芸員、佛教大学修士(文学)。主要論文「近世における油屋仲間の実態−明和期を中心として−」『近江地方史研究』43号、「近世における紅葉鮒」『野洲市歴史民俗博物館研究紀要』第43号

櫻井 信也(さくらい・しんや)氏、1960年滋賀県生まれ。大谷大学非常勤講師、栗東歴史民俗博物館歴史民俗調査員。主要論文「日本古代の鮨(鮓)」『続日本紀研究』第339号

篠原 徹(しのはら・とおる)氏、1945年中国生まれ。滋賀県立琵琶湖博物館館長、文学博士(筑波大学)。主要著者『自然と民俗−心意のなかの動植物』、『海と山の民俗自然誌』、『自然を詠む−俳句と民俗自然誌』

中村 大輔(なかむら・だいすけ)氏、1974年滋賀県生まれ。草津市立渋川小学校教諭、滋賀大学大学院在学中

日比野 光敏(ひびの・てるとし)氏、1960年岐阜県生まれ。岐阜市歴史博物館学芸員、名古屋経済大学短期大学部教授、京都府立大学京都和食文化センター特任教授を経る、愛知大学博士(日本文化)。主要著書『すしの貌』『すしの歴史を訪ねる』『すしの事典』『すしのひみつ』

藤岡 康弘(ふじおか・やすひろ)氏、1954年滋賀県生まれ。滋賀県水産試験場長、琵琶湖博物館上席総括研究員を経て、びわ湖の森の生き物研究会事務局長、琵琶湖博物館特別研究員、農学博士(東京大学)。主要著書『川と湖の回遊魚ビワマスの謎を探る』

堀越 昌子(ほりこし・まさこ)氏、1946年滋賀県生まれ。京都華頂大学教授、滋賀大学名誉教授、農学博士(京都大学)。主要著書『食べ伝えよう滋賀の食材』『ふなずしの謎』『新装合本 つくってみよう滋賀の味』『湖魚と近江のくらし』

渡部 圭一(わたなべ・けいいち)氏、1980年愛媛県生まれ。滋賀県立琵琶湖博物館学芸技師 筑波大学博士(文学)。主要著書『村落・宮座研究の継承と展開』(共著)

<選考理由>
近江の名産ふなずしを歴史を中心として様々な角度から明らかにしていく、論文集である。
起源と思われる東南アジア各地のなれずし、中国(蜀)からの伝来に始まり、古い形をそのまま残しているのではなく、様々に変異しながら保存より調理(よりおいしく)へと現在の形に至るまで高度に発展してきたことが俳句など様々な文献・歴史的資料を基に明らかにされていく。地方の宝であるふなずしについてより明確にし、理解してもらおうという熱意の感じられる本である。
一方で、論文集であるために、通して読むとバランスの問題があったり、ふなずしをあまり知らない人に手に取ってもらう、さらにはおいしいものだとわかってもらう工夫がほしいという意見もあったが、賞にふさわしい本であることを損ねるものではないことを付け加えておく。

●第30回 地方出版文化功労賞 特別賞

■『北の詩と人−アイヌ人女性・知里幸恵の生涯』

著者  須知 徳平(すち とくへい)
発行所 株式会社 岩手日報社
    岩手県盛岡市内丸3−7 電話019−653−4111(代)
発行者 東根千万憶
体 裁 429頁 定価2,750円+税
発 行 2016年5月20日

著者略歴
須知徳平(すち とくへい)氏 1921年(大正10年)岩手県紫波郡生まれ。
2009年(平成21年)3月17日、87歳で死去

<選考理由>
『北の詩と人−アイヌ人女性・知里幸恵の生涯』
アイヌ語の本格的研究の創始者である金田一京助の文法研究、ユーカラ研究に大いに力となり、自らもアイヌ神謡集出版によりアイヌ伝統文化の復活復権に転機をもたらした、アイヌ出身の女性知里幸恵の生涯を小説の形で紹介した本である。
彼女は幼少のころから聡明で、日本人とアイヌ民族という二つのアイデンティティーなど様々に悩み戸惑いながらも女子職業学校へと進学し、その後上京して金田一家へ寄宿する。ユーカラ語りの祖母との生活などを通じアイヌ古語にも素養のあった彼女は金田一の刺激もあり、アイヌ文化の継承・保存に誇りを持って取り組むが、著書の完成とともに持病の心臓病のため19歳の生涯を閉じる。
小説作品ではあるが、忘れられようとしている彼女の功績を、わかりやすく再び世に知らしめる「評伝」としての価値を評価した。



●第30回 地方出版文化功労賞 特別賞

■『私の軍艦島記』

著者  加地英夫(かじ ひでお)
発行所 株式会社 長崎文献社
   長崎市大黒町3−1  長ア交通産業ビル5階
   電話095−823−5247
発行者 柴田義孝
体 裁 247頁 定価1,600円+税
発 行 2015年12月1日

著者略歴
加地英夫(かじ ひでお)
1932年(昭和7年)端島生まれ。長崎県立瓊浦(けいほ)中学時代に被爆。新制高等学校長崎西高を卒業して端島の「三菱砿業」に就職。工作課勤務で閉山まで働く。
現在「長崎端島会」会長を務める。

<選考理由>
『私の軍艦島記』
軍艦島で生まれ育ち、事務方の職員として閉山まで仕事をつづけた著者の半生記である。
審査では軍艦島の住民生活や仕事についての実体験に基づく記録としてこの本を評価した。庶民の生活記録というものはきちんとした形で残されにくく、世代が変わると細かい点で分からなくなる。まして、海の孤島が石炭で反映し、その終了とともに無人となった島の生活はそうであろう。また、炭鉱労働者ではない立場からの軍艦島の仕事や職場の雰囲気についての貴重な資料でもあるという評価もあった。
著者の意図は自身の半生記であるために、軍艦島の記録としてみたときに冗長な部分があるとの意見もあったが、一つの特殊な世界の記録として貴重なものと評価した。


第30回  審査委員(2017年6月現在)

審査員長   齋藤明彦(元鳥取県立図書館長)
審 査 員  岩田 直樹(鳥取県立高等学校副校長)
   金澤 瑞子(倉吉文化団体協議会)
   上田 京子(鳥取短期大学講師)
   松本 薫 (作家・NHK文化センター講師)
   松田 暢子(日野町立図書館長)
   山脇 幸人(倉吉市立図書館長)
   福本 慎一(鳥取県立図書館長)
   岡本 圭司(鳥取県職員)