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第29回 地方出版文化功労賞受賞作

第29回地方出版文化功労賞は、昨年の10月22日から10月28日、鳥取県立図書館で開かれた「ブックインとっとり2015」に出品展示された全国の地方出版物(対象約500点)の中から、各地区の推薦委員および一般の来場者による会場での投票によりその中の13点を最終候補作として挙げ、12名の審査員が持ち回りで数カ月にわたって審査し、本年7月2日の最終審査会において決定した。
 結果は以下のとおりです。
  
●第29回 地方出版文化功労賞

■地域ではたらく「風の人」という新しい選択

著者 田中輝美(たなかてるみ)
     法政大学社会学部メディア社会学科
     藤代裕之(ふじしろひろゆき)研究室

著者略歴
田中輝美(たなか・てるみ)
ローカルジャーナリスト。島根県浜田市生まれ。
山陰中央新報社で記者をしながら、地域で働く喜びに目覚める。琉球新報社との合同企画『環りの海−竹島と尖閣』で2013年日本新聞協会賞受賞。有志でブログ「シマブロ!」を運営し100人規模のイベントを開催。2014年秋、独立。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)運営委員。共著に『環りの海』(岩波書店)、『未来を変えた島の学校−隠岐島前発ふるさと再興への挑戦』(同)

藤代裕之(ふじしろひろゆき)
法政大学社会学部社会学科准教授/ジャーナリスト。広島大学卒。徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナンテでニュースデスクや新サービス立ち上げを担当し2013年から現職。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員。著書『発信力の鍛え方』など。ソーシャルメディア時代のジャーナリストやメディアのあり方を研究する中で、地域からの情報発信に関心を持ち実践活動を行っている。

(藤代裕之ゼミ生―取材参加者 学年は取材時)
坂井友紀(社会学部政策科学科4年)、有賀愛(社会学部社会政策科学科3年)、大谷和佳子(社会学部メディア社会学科3年)、須藤衣里子(社会学部メディア社会学科3年)、関根拓郎(社会学部メディア社会学科3年)、櫻本静香(社会学部メデイア社会学科3年)、寺田匡志郎(社会学部メディア社会学科3年)、永山孝太(社会学部メディア社会学科3年)、沼能奈津子(社会学部メデイア社会学科3年)

発行所 ハーベスト出版
    島根県松江市東長江町902-59  電話0852-35-9059
体 裁 269頁 定価1,400円+税
発 行 2015年8月11日

<選考理由>
地域の活性化に活躍した人たちの活躍以前からの流れとその働き方を、法政大学のゼミ生たちのインタビューをもとに紹介した本である。地域の活性化にかかわる人たちを取り上げた本は近年多く出版されている。また取り上げた人数のため、あるいは取材者が学生だったこともあってか、もう一歩踏み込んでほしいという審査評も複数見られた。
しかし、それらを踏まえたうえでこの本を功労賞にということで審査会は一致した。以下にその理由を述べる。

@もともとは普通の人(少なくとも地域活性化に強い関心を持たなかった人)がそれぞれの活動で大きな足跡を残す過程を、取り上げられた人の本音とともに、生きた言葉で語られることが驚きと納得感、さらには読後の充実感を与える。

A地方には一片の興味もなかった者もいる学生たちが、地域ではたらくことの意義をそれぞれなりに考えてインタビューを行っており、また、その反作用も含め、各章末の取材記に(模範解答ではない)光るものがみられる。

B学生、指導教官、ローカルジャーナリストの三者の立ち位置や考え方の違いがうまく作用し、類本を一歩超えた「多くの人に読んでもらいたい」本となっている。

 

●第29回地方出版文化功労賞 奨励賞

■『獄中メモは問う−作文教育が罪にされた時代』(道新選書47)
著者 佐竹直子(さたけなおこ)

著者略歴 佐竹直子氏、1966年、釧路市生まれ。藤女子大学英文科卒、日本電信電話株式会社(NTT)、NHK釧路放送局リポーター、釧路新聞社記者を経て2006年より北海道新聞釧路支社報道部で勤務。北海道新聞情報サービス釧路編集センター記者。主に夕刊釧路根室版の特集記事を取材・執筆し、釧路の元漁労長らの半生を通し北洋漁業全盛期をたどった連載「海を拓いた男たち」(全34回)、釧路湿原が国立公園に指定されるまでの人々の足取りを追った連載「不毛の大地 母なる大地」(全58回)など担当した。

発行所 北海道新聞社
      札幌市中央区大通西3丁目6
   電話011−210−5742(出版センター[編集])
   電話011−210−5744(出版センター[営業]) 発行者 松田敏一
体 裁 235頁 定価1,296円+税
発 行 2014年12月6日

<選考理由>
偶然の獄中メモ「発見」から北海道での綴方教育弾圧の経過、対象者の当時の評価・状況とその後について掘り下げている。

貧しい子も多かった時代に、なんとかその子たちに生きる力を与えようと努力した熱心な教師たちが、理不尽な理由で捕らえられ、無理やり罪を負わされる。そして子どもたちが自身の生活や状況を言葉に表すことが悪とされ、権力によりストーリーがねつ造されていく過程、さらにはその影響が戦時中だけでなく戦後にも続いていくさまを著者は直接の関係者や家族も含めた幅広い取材に基づき客観的な筆致で綴ってゆく。

それゆえ、この事件の持つ普遍的な意味、今日的な意義を読み取ることがより容易になっている。

新聞連載をもとに書かれているためか、内容が時にあちこちに飛んだり、同じ内容が何度か出てくるところなど、若干の欠点はあるが、忘れてはならないいくつかの視座を与えてくれる本である。

第28回  審査委員(2016年7月現在)

審査員長   齋藤明彦(元鳥取県立図書館長)
副審査員長  北尾 勲(鳥取県歌人会会長)
審 査 員  岩田 直樹(鳥取県立八頭高等学校副校長)
   金澤 瑞子(倉吉文化団体協議会)
   上田 京子(鳥取短期大学講師)
   松本 薫 (作家・NHK文化センター講師)
   松田 暢子(日野町立図書館長)
   岡本 康 (元高等学校長)
   山脇 幸人(倉吉市立図書館長)
   福本 慎一(鳥取県立図書館長)
   岡本 圭司(鳥取県職員)
   長柄 裕美(鳥取大学地域学部准教授)