●第36回地方出版文化功労賞 奨励賞
■『小学生が描いた昭和の日本
児童画五〇〇点 自転車こいで全国から』
編著者 |
鈴木 浩(すずき ひろし) |
発行所 |
石風社(福岡県) |
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福岡県福岡市中央区渡辺通2-3-24ダイレイ第5ビル5階 電話 092-714-4838 |
発行者 |
福元満治 |
体 裁 |
338頁 定価 2,500円+税 |
発 行 |
2022年1月20日刊行 |
著者略歴
鈴木 浩(すずき ひろし)氏
1945年、岐阜市に生まれる。1969年?1970年、児童画を集めて自転車で日本全国の小学校を訪問し、「足で集めた児童画展」を開催する。1971年?1984年、映画製作会社に勤務し、企業PR映画や記録映画、教育映画を演出する。1984年、独立し「暮らしの映像社」を始め、現在に至る。
主な作品
『わが心の里子たち』(基督教児童福祉会 国際精神里親運動部)
『るっちゃんの旅立ち』(日本基督教団 日立教会)
『なにか私にできること―シスター海野の第二の人生―』(健全映画鑑賞会)
『笑顔をつないで―東日本大震災 復興支援活動の記録』(ChildFundJapan)
『平和への決意フィリピン篇・韓国篇』(さいたま教区)
『カリスタジャパンとわたしたち』(カリスタジャパン)
『後藤栄子先生の在宅介護教室』(自主制作)
『サツマイモ再発見!』(自主制作)
『わたしはメッセンジャーナース』(在宅看護研究センター)
テレビ番組『心のともしび』2000年?2006年(YBU心のともしび運動本部)
共著に『ありがとう!フィリピン』(女子パウロ会)
<選考理由>
全国120の(断られたところを加えれば、さらに多くの)小学校を、基本的に自転車に乗って一年かけて巡り、500点の児童画を集めて東京の地下通路ギャラリーで展示した青年の物語と、集められた画の本である。
50年前とは言え、青年の情熱と無鉄砲さ、飛び込みの青年を受け入れて児童画を託す学校関係者の人に対する信頼と度量。現代では考えられないストーリーに驚く。
そして何より、50年前の小学生の、時代を反映した500枚の画の迫力と面白さに圧倒される。
ながく保管されてきた児童画が、デジタル化によりネット公開され、描いた本人に帰り始めたことも含め、画と物語の双方が相まって読む者の琴線に触れる本である。
■『CAFÉ モンタン』
編集・制作 |
萬鉄五郎記念美術館・平澤広・五十嵐佳乙子・高橋峻 |
発行所 |
杜陵高速印刷出版部(岩手県) |
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岩手県盛岡市川目町23番2号 電話019-651-2110 |
体 裁 |
319頁 定価 2,500円+税 |
発 行 |
2022年3月31日刊行 |
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<選考理由>
1960年代の盛岡で様々な文化のコミュニティーと発信の拠点であったCAFÉモンタン。
そこでは美術展が開かれ、音楽が奏でられ、なかでも「M(モンタン)美術賞」は東京の画廊での個展が約束されるなど芸術家を育てる意欲に満ちている。そこから生まれた美術、音楽、文芸等がアーティストの作品や個展の案内、批評や原稿、印刷物など目で見られる資料によって紹介され、この時代にこんなCAF?があったのかと驚かされる。また、そこに登場する人々の多彩さや繋がりが楽しい。
ニューヨークタイムズ紙「2023年に行くべき52カ所」に選ばれた「地方都市」盛岡の原点の一つを見たと思わせる本である。
この本は展覧会のカタログとして発行されていて、資料の収集や網羅性についての長所と、モンタンの主小瀬川了平の掘り込み不足や、図版の小ささで文字が読めないなどの短所を併せ持つ。その短所があってなお、将来に向かって胸を張って残すべき街の文化の大切な記録が出版されたことを喜びたい。
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●第36回 地方出版文化功労賞 特別賞
■『鹿児島 錫山鉱山遺構目録』
著者・写真 |
志賀 美英(しが よしひで) |
発行所 |
南日本新聞開発センター(鹿児島県) |
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鹿児島市山下町9-23 電話099-225-6854 |
体 裁 |
322頁 定価 4,000円+税 |
発 行 |
2022年8月8日刊行 |
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著者略歴
志賀美英(しが よしひで)
鹿児島大学名誉教授 工学博士(1977年3月、早稲田大学) 専門分野:資源経済学、鉱床学
1947年12月 福島県相馬郡小高町(現、福島県南相馬市小高区)生まれ
1977年3月 早稲田大学大学院理工学研究科資源科学専攻博士課程終了
1979年4月 早稲田大学非常勤講師
1990年4月 鹿児島大学教授(教養部)
1997年4月 鹿児島大学教授(法文学部)
2013年3月 定年により退職
2013年7月 「私設鹿児島鉱石展示室」開設
2015年7月 放送大学非常勤講師
など
著書:『鉱物資源論』(九州大学出版会、2003年3月)、『写真集 金属鉱石』(南日本新聞開発センター、2015年8月)、『鉱物資源問題と日本』(九州大学出版会、2019年9月)など
定年退職後は、鉱物資源の普及活動(講師・執筆、現地案内、鉱石の貸出、鉱石資源の展示会開催など)を行っている。
<選考理由>
鹿児島県錫山鉱山について鉱山学の観点を中心にまとめられた本格的な報告書である。
今も残る多くの遺跡を巡検し、遺物の一部や古文書など文献記録なども渉猟し、鉱石採掘から運搬、選鉱、精錬、製品製造までの工程を明らかに。さらに江戸期の技術ではできなかった高純度の精錬を江戸末期以降の近代化により転換した歴史的変遷も明示している。
こうした事柄が、遺構、遺物、文献の提示されたこの一冊で理解、確認できることとともに、これが関連するいくつかの分野の専門家によるコラボでなく、一人の研究者によってまとめられた作品であることに敬意を表する。
現代ではあまり注目されない錫鉱山の歴史遺産、産業遺産としての意義と価値を総括したことはもとより、地域の歴史資料としても重要な労作である。
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