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第33回 地方出版文化功労賞受賞作
第33回地方出版文化功労賞は、本年7月11日の最終審査会において決定した。同賞は、昨年11月1日から11月4日、倉吉市立図書館で開かれた「ブックインとっとり2019」に出品展示された全国の地方出版物(対象約300点)の中から、各地区の推薦委員および一般の来場者による会場での投票によりその中の12点を最終候補作として挙げ、9名の審査員が持ち回りで数カ月にわたって審査したものである。
結果は以下のとおりです。 |
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●第33回 地方出版文化功労賞
■『信仰と建築の冒険 ‐ヴォーリズと共鳴者たちの軌跡-』
著 者 吉田 与志也(よしだ よしや)
発行所 サンライズ出版株式会社
滋賀県彦根市鳥居本町655-1 電話0749-22-0627
発行者 岩根順子
体 裁 456頁 定価2,800円+税
発 行 2019年5月10日
著者略歴
吉田 与志也(よしだ よしや)氏
1954年、滋賀県近江八幡市生まれ。立命館大学経済学部卒業、カリフォルニア州立大学サンホセ校経営学科卒業。製薬業界に長く、MSD株式会社生産本部長を経て、キョーリン製薬グループ工場株式会社代表取締役社長、現在はMSD株式会社監査役・公益財団法人MSD生命科学財団監事。薬事功労者として滋賀県知事表彰(2016年度)と厚生労働大臣表彰(2018年度)を受賞。吉田悦蔵の孫にあたり、ヴォーリズ住宅の原点といわれる吉田家住宅(滋賀県指定有形文化財、国登録有形文化財)の保存に取り組んでいる。
<選考理由>
『信仰と建築の冒険 ‐ヴォーリズと共鳴者たちの軌跡-』
信徒伝道者であり、建築家、社会事業家であるウィリアム・メリル・ヴォーリズの生涯を、日本で最初の教え子であり、事業の協力者であった吉田悦蔵の日記・書簡などをベースに、吉田の孫に当たる著者が著した評伝である。
ヴォーリズは信徒伝道者として滋賀県を中心に活動し多くの信徒を獲得したが、一方それを支える事業として、教会関係のほか、学校、個人住宅、病院、百貨店、郵便局など数多くの建築物を設計、施工管理した。
その建築は特定の様式にこだわらず、材料や建材を工夫することによって、比較的安価で風土・目的に合う建物を目指した。これにより数多くの建築物が作られ現在も多数が残っている。
しかし、これまでその評価は功績に比べいまだ低いといわざるを得ない。
また、彼は近江兄弟社を設立し社会・経済活動を行っている。
彼は自著「失敗者の自伝」を残しているが、キリスト者としての面の記述が多く、今回の作品はそうした部分を補い、より多面的な姿を浮かび上がらせてくれる。建築家ヴォーリズとその建築物に注目が集まりつつある今、より高く評価されるべき郷土の偉人の姿を、その地の出版社によって発行された、読みやすく多面的に記述されたこの作品により全国に広める事ができることを期待できる本である。
なお、後半生についての記述が簡易になっている。この部分がより詳細に世に広められることを希望する意見もあったことを付加する。
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●第33回地方出版文化功労賞 奨励賞
■『日本産鳥類の卵と巣』
著 者 内田 博(うちだ ひろし)
発行所 まつやま書房
埼玉県東松山市松葉町3-2-5 電話0493-22-4162
発行者 山本正史
体 裁 229頁 定価 2,500円+税
発 行 2019年8月30日
著者略歴
内田 博(うちだ ひろし)氏
1949年 東松山市に生まれる。
主な著書・共著・論文
1986 猛禽類の巣近くで繁殖する鳥について 日鳥学誌35:25-32
1989 冬季におけるセグロセキレイ Motacilla grandis の識別について.JBBA4:48-52
1990 共著 ヨシゴイ Ixobrychus sinensis の集団繁殖 日鳥学誌39:53-61
1990 共著 カッコウの子育て作戦 あかね書房 東京.
2000 共著 都幾川におけるセグロセキレイMotacilla grandis の定住性と年生残率Jpn. J.Ornihol. 49: 1-8.
2007 共著 埼玉県中央部の丘陵地帯でのオオタカAccipiter gentiles の生息状況と営巣特性 日本鳥学会誌
56:131-140.
2011 本州におけるウグイスCettia diphone に専門的に托卵するホトトギスCuculus poliocephalus の繁殖生態
日本鳥学会誌60:78-87.
2013 共著 日本のタカ学 生態と保全 樋口広芳編 東京大学出版会 東京.
2016 共著 オオタカAccipiter gentiles の雄幼鳥の繁殖なわばり確立過程 日本鳥学会誌65:129-142.
2017 埼玉県東松山市周辺でのコサギEgretta garzetta の減少 日本鳥学会誌66:111-122.
2018 共著 イカルチドリの配偶システムと雌雄の役割分担 Strix 33:183-193.
2017 イカルチドリの繁殖期における形態および羽色の性差の検討 鳥類標識協会誌29:16-24
<選考理由>
『日本産鳥類の卵と巣』
一風変わった労作である。
長期間にわたり鳥類研究のためのフィールドワークを行った、アマチュア鳥類学者である著者が収集した日本の鳥類の卵と巣の写真と、交流のある研究者から出版に向けて提供された写真をベースにして、それに営巣環境や卵・種の特徴などのコメントが添付された本である。
100数十にも及ぶ種の卵と巣が網羅されたこの本は、多くの人に勧められる本ではないという声もあったが、鳥好きの人たち向けというだけでなく、図書館の参考資料として有用かつ貴重であるとの評価が、特に図書館関係者中心に強かった。
40近くのトピックスを掲載することで、図鑑としてだけでなく、読み物としても楽しめ、卵や巣に対して興味を持たせるようにしていることも評価された。
購入対象者の限られたこうした本は大手出版社で発行することはなかなか難しいと思われ、自費出版ではあるが地方出版の一つの有り様を示すものと思料する。
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●第33回 地方出版文化功労賞 特別賞
該当なし
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第33回 審査委員(2020年7月現在)
審査員長 |
齋藤明彦(元鳥取県立図書館長) |
審 査 員 |
岩田 直樹(鳥取県立高等学校校長) |
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金澤 瑞子(倉吉文化団体協議会) |
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上田 京子(鳥取短期大学講師) |
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山脇 幸人(倉吉市立図書館長) |
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網浜 聖子(鳥取県立図書館長) |
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岡本 圭司(鳥取県職員) |
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岡村 知子(鳥取大学准教授) |
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松井 潔(元鳥取県埋蔵文化センター室長) |
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